44年の重さの送別会

私が保育園の年長になろうとしている頃、突然我が家にやってきた。

2年前から、我が家にいる親戚のお兄ちゃんと一緒の部屋で生活を始めた。

親戚のお兄ちゃんと比べると、とてつもなく小さな男だった。当時3年生だった私の兄よりも数段小さかった。


これが、44年前。小黒硝子店に丁稚としてやってきた彼の記憶である。

住み込みで働いていた彼は、実に、実家で過ごした15年の3倍近く、我が社に勤めてくれたことになる。

10年程で住み込みは終わり、やがて、結婚。

新婚旅行から帰り挨拶に来た時の、奥さんの清楚なイメージが、当時売り出し中の仁科亜紀子に似ていた記憶が鮮明に残っている。

私が社長になった14年前から後も、私の父から学んだことを忠実に守り続けた彼を、定年退職まで10ヶ月を残しながら、今日送別会を開いている。

10ヶ月待てなかったのか?自問自答は続く。

全社員と、私の両親、主な取引先。

みんなでどんちゃん騒ぎ。

飲んで、飲んで、飲まれて飲んで、酔いつぶれて眠るまで飲んで。

1泊2日のセレモニー。44年の彼の歴史から比べたら、決して大きすぎることはありますまい。